概要 -Outline-

ごあいさつ

日本の慢性腎臓病(CKD)患者数は1,300万人を超え、成人8人に1人が患う新たな国民病です。
なぜ今、そんなにCKD患者が増えているのか?多くの基礎的・臨床的研究からその理由がわかってきました。
大きな理由の一つに糖尿病合併症の一つである糖尿病性腎症が急増(1998年から透析導入原疾患の一位)していることや、高齢化など社会的要因が挙げられます。腎臓は沈黙の臓器と呼ばれ、自覚症状がないまま糖尿病や加齢によってCKDは進行していきます。しかし無症状で進行するCKDには多様なリスクが潜んでいることがわかってきました。

その一つにCKDは末期腎不全による血液透析に至るのみならず、生活習慣病(心筋梗塞、動脈硬化)発症・進展のリスクとなることが示されました。
つまり、腎臓は心臓や血管など他の臓器と密接に繋がっており、そのため腎機能が低下すると心臓や血管の機能低下を引き起こします。
CKDの進行が他の臓器に悪影響を及ぼすことは、腎臓が全身の健康を保つためにとても重要であることを示しています。
さらに老化はCKD進行を早める要因ともいわれ、その逆にCKDは老化を加速させることも科学的に実証され、老化とCKDの悪循環も注目されています。
つまり、現代の生活スタイルや超高齢化社会においては、生活習慣病と老化はCKDと切り離せない関係にあります。

将来の活力ある健康長寿社会づくりを目指す上で、高齢者の生活の質(QOL)向上や総医療費の削減は、解決が急がれる重要な課題のひとつです。
そこで、CKD撲滅によって健康長寿社会を築くことを目指し、2013年11月に協和発酵キリン株式会社のご支援のもとCKD病態生理学講座が新設されました。本講座では革新的視点からCKDの病態生理を解明し、より有効なCKD予防・治療戦略の開発、ひいては高齢者が健康で自立した豊かな生活を送れる高齢健康長寿社会づくりに貢献してまいります。

主な研究課題


CKD病態生理学講座主任
特任准教授 稲城 玲子

CKD病態生理学講座では、東京大学大学院医学系研究科腎臓・内分泌内科(南学正臣教授)との連携のもと、CKDの病態生理に関連する基礎研究や臨床研究を進めています。

  • 様々なストレス(小胞体ストレス、虚血、糖化ストレス、酸化ストレス)に対する適応シグナルのCKDにおける破綻機構の解明と、それら成果に基づく新規CKD治療戦略の確立
  • 腎臓エリスロポエチン(EPO)産生細胞のCKD進行に伴う機能的変化と腎性貧血発症進展の機序解明
  • 糖尿病患者におけるCKD増悪因子の同定と、それを標的とした診断・創薬の開発