概要 -Outline-

ごあいさつ

東京大学大学院医学研究科 慢性腎臓病(CKD)病態生理学講座は2013年11月に寄付講座として新設され、5年間の研究活動を経て、2018年11月からは社会連携講座として生まれ変わりました。
本講座は、共同研究機関の協和発酵キリン株式会社、協力講座の東京大学大学院医学系研究科 腎臓・内分泌内科(南学正臣教授)との連携のもとで、本学における研究の進展、人材育成の活性化を遂行して参ります。

日本の慢性腎臓病(CKD)患者数は1,300万人を超え、成人8人に1人が患う新たな国民病です。
なぜ今、そんなにCKD患者が増えているのか?多くの基礎的・臨床的研究からその理由がわかってきました。
例えば、糖尿病合併症の一つである糖尿病性腎臓病(DKD)が急増(1998年から透析導入原疾患の一位)していることや、深刻な超高齢社会(加齢)といった社会的要因は、DKDを含むCKD患者の急増を招いています。
腎臓は沈黙の臓器と呼ばれ、自覚症状がないまま糖尿病や加齢によってCKDは進行していきます。
さらに無症状で進行するCKDには健康長寿を阻む重大なリスクが潜んでいることがわかってきました。
その一つにCKDは進行すると末期腎不全による血液透析に至るのみならず、生活習慣病(心筋梗塞、動脈硬化)発症・進展のリスクとなることが基礎・臨床研究にて明らかにされました。
つまり、腎臓は心臓や血管など他の臓器と密接に繋がっており(臓器間ネットワーク)、腎機能が低下すると心臓や血管の機能も低下します。
CKDが他の臓器に悪影響を及ぼすということは、言い換えれば腎臓が全身の健康を維持するためにとても重要であるということです。
さらにヒトは年を摂ると腎機能低下が低下しますが、それがCKD発症を早める要因となることや、逆に若年者でもCKDを発症すると腎臓老化が加速することなどが科学的に実証され、腎臓老化とCKDの悪循環も注目されています。

腎臓は、血中老廃物を濾過し血液浄化を行い、一日約150Lの原尿を99%以上濃縮するために、機能の異なる腎臓細胞群(糸球体足細胞、尿細管上皮細胞など)から構成されています。
故に、腎臓は他の臓器に比べて腎臓細胞間の相互作用(細胞間クロストーク)が機能維持のために大切です。
特に腎臓細胞機能破綻の分子メカニズムに関する研究において、細胞間クロストークの破綻、さらにそれらの引き金となる腎臓細胞の小器官(小胞体、ミトコンドリア、ゴルジ体といったオルガネラ)の機能・形態障害、及びそれに伴うオルガネラ間の相互作用(オルガネラクロストーク)の破綻がいかに腎病態形成に関与するか、大いに注目されています。

現代の生活スタイルや超高齢社会においては、将来の活力ある健康長寿社会づくりを目指すこと、そのために高齢者の生活の質(QOL)向上や総医療費の削減は解決が急がれる重要な課題のひとつです。
そういった観点から、生活習慣病や加齢と切り離せない関係にあるCKDの病態生理学は、極めて重要な研究課題です。
そこで本講座では、革新的視点からCKDの病態生理を解明し、より有効なCKD予防・治療戦略の開発、ひいては高齢者が健康で自立した豊かな生活を送れる高齢健康長寿社会づくりに貢献してまいります。

主な研究課題


CKD病態生理学講座主任
特任教授 稲城 玲子

CKD病態生理学講座では、東京大学大学院医学系研究科腎臓・内分泌内科(南学正臣教授)との連携のもと、CKDの病態生理に関連する基礎研究や臨床研究を進めています。

  • 様々なストレス(小胞体ストレス、虚血、糖化ストレス、酸化ストレス)適応シグナル、及びそれらの破綻がCKD発症進展に及ぼす影響の分子機序解明、及びそれら成果に基づく新規CKD予防・治療戦略の確立
  • 腎臓細胞機能恒常性維持におけるオルガネラストレスシグナル、特に小胞体やミトコンドリアを中心としたオルガネラクロストークの病態生理学的役割の解明
  • CKD進行に伴う腎臓エリスロポエチン(EPO)産生細胞の機能変化から見る新しい腎性貧血発症進展機序の解明
  • 糖尿病患者におけるDKD増悪因子の同定と、それを標的としたDKD診断法の開発と創薬

    CKD病態生理学講座の紹介記事をご覧下さい。